以下インポーター資料より抜粋しました。
現当主ティボーは四代にわたるシャンパーニュ生産者の家系に生を受けたが、始めは家業を継ぐつもりはなく、自動車産業の職業訓練学校を卒業した。
彼の父は伝統的なレコルタン・コーペラトゥール(収穫したブドウを協同組合に持ち込んで醸造し、
出来たワインを自身のブランドで販売する生産者)であり、ブドウ栽培よりも趣味の化石発掘に人生を捧げていた。
ティボーのワインへの情熱を呼び覚ましたのはむしろ、フィリップ・ランスロやオーレリアン・ルルカンなど、才気あふれる友人の生産者たちだった。
もともと自然への愛着が人一倍強かったティボーは畑で働きながらビオロジックやビオディナミへの造詣を深め、2016年から慣行農法からの脱却を進めていった。
意志の強さと行動力を併せ持つ彼はビオディナミのセミナーや会合に精力的に参加し、自身の理解を深化させるとともにビオディナミの啓発活動にも尽力。
ACB(シャンパーニュ・ビオロジック協会)の理事も務めるほか、それまでオーブ県だけで開かれていたMABD(ビオディナミによる農業運動)のセミナーを自身の村に招聘するなど、
シャンパーニュにおけるビオディナミの発展に貢献している。
【畑と栽培について】
2019 年にビオロジックとデメターの認証を取得。ティボーは様々な生産者に乞うてきた教えを反芻し、試行錯誤しながら自らの考えと感性に従ってビオディナミを実践する。
ヴァレ・ド・ラ・マルヌに広がる畑はムニエが中心だが、ピノ・ノワールとシャルドネも合わせて四分の一ほど植えられており、
それによってシャンパーニュの石灰岩土壌を体現する唯一無二のワインを造ることができるとティボーは語る。
2018 年からは一部の畑で樹木や下草を植え、植物同士の相互作用の中でブドウを育てるアグロフォレストリー(森林農法)にも着手。
畑には百本以上の樹木が植えられている。収穫前に緑肥を施し、生えてきた植物を冬に羊に食べさせる。
実施している畑では土を耕す必要がほとんどなくなったという。
他にも土を固く締めてしまう大型トラクターの使用をやめ、キャタピラ式の小型のものを導入するなど、畑の健全さとブドウの質のためには投資と手間を惜しまない。
【セラーと醸造について】
2017 年以降は協同組合へのブドウの販売を完全にやめ、元詰めに専念。
初期の醸造はティボーの幼馴染であり同時期にビオディナミへと転換した同業者でもあるフラヴィアン・ノワックが手助けしていた。
2021 年の収穫に合わせて醸造所を新設し、区画ごとにワインを造れるよう 2基のプレス機を導入。
アルコール醗酵は時には 8 ヶ月もの時間をかけてゆっくりと、時にはマロラクティック醗酵と並行して進む。
セラーの気温が低いおかげで揮発酸値の上昇は抑えられるのだという。
ティラージュは一般的な王冠ではなくコルクで、ルミュアージュ(動瓶)はジロパレットを用いず昔ながらの手作業で行うなど、
一切に妥協しないティボーの信念は醸造にも如実に表れている。
ドザージュはせず、酸化防止剤も問題が発生した場合には使用しているとはいえ、2018 年以降は無添加。
ソレラ用の樽のワイン以外は全て単一収穫年のブドウから造られるが、
エチケットにはミレジムの表記はしていない。
一部のキュヴェではオーレリアン・ルルカンに倣い、リキュールではなく搾りたての果汁を使うなど意欲的な挑戦も計画している。